回想

2003年12月13日
風が吹きすさぶ道を歩きながら
ファーのマフラーに首をうずめ
握ったコーヒーの缶の温かさと
立ち上る白い湯気に
冬を知る

街はクリスマスに向けて浮き立ち
めかしこんで煌く街路樹の中で
一つだけ黒い影のように
あたしは空虚を抱えて進んでゆく

たくさんの男友達と
たくさんの女友達
楽しい仲間たち
増えていく携帯のメモリー
だけど使われないメモリー
一体この小さな機械の中に
どれだけ真に必要な情報があるのだろう

携帯のアドレスだけのつながりと
家の電話や住んでいる場所も知っているつながり
どちらが深いともわからない

流れるようにたくさんの人々が
あたしと関わっては消えていく
あたしもまた
迎えいれる気もないままに
作り笑顔を浮かべて社交的に振舞ってみる

華やかに暮らしていると
思っているならそう思い続ければいい
本当のあたしを知る必要もない
あたしだって本当の自分が何なのか
わからないし わかろうと思う気もない

あたしもあなたも
お互いを都合よく使っていて
寂しいとき 暇なときだけ
ボタンを押す

なんて便利な機械なのだろう
繋がったときだけ
会える
気分が向いたときだけ
出ればいい

3年前のこの月のこの曜日
ちょうどあたしとあなたは出会った
まるで運命的な出会い
それから周りも羨む烈しい恋に落ちて
何もいらないあなたさえいれば
なんて思った時期を経て
まさか今
こんな関係にまでなっているだなんて

3年前の冬 誰が思った?
すでに恋愛関係はとうに終わっているというのに
いざとなったときに頼れる相手は
親でもなく親友でもなく
ただ一人あなただなんて

…こんなことを徒然と思いながら
すでに湯気の立たなくなった缶を捨て
携帯をバッグにしまい
ブーツのヒールを道に響かせながら
一人 歩いていく

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索