鴎盟

2007年12月12日
南のほうの或る港町に滞在している

私の暮らす街より温かだと聞いて
軽装でやって来たら意外に寒く
現地の衣料品店であれこれ買い込む

百貨店やファッションビルはおろか
気の利いた服を置く店など皆無で
仕方なく 普段なら買わないような
安価で とても帰ってからは着られないような
服を買う それでもこの町で一番まともな店で

広がるのは海 そして海の幸を素材にした食堂
かつては観光客も大勢訪れたらしいが
今は寂れてしまった
そんな街

金髪に染めていきがっている高校生の髪型は
90年代前半のような古臭さで
ヘンなイントネーションで大声でがなる
この土地の訛りらしい
そんな街

大音量でガンガン音楽を鳴らしながら
車を停めて降りてきたミニスカの
お姉さんの足元は
ハローキティの豹柄サンダルスリッパ
そんな街

若干のカルチャーショック
…いや、かなり。

この町に住む人たちはこういう世界の中だけで
生きていくんだろうか 生きているんだろうな

テレビもなく コンポもない部屋に泊まり
Don’t disturbで居続ける(もちろんそんな札などないが)
車の流れる音もなく 喧騒もなく
無音の夜 誰もいない一人の部屋
持ってきたパソコンだけが世の中との繋がり

文字通り島流しのような日々

つい数日前までの
街のクリスマスイルミネーションに溢れる生活から
一転
仰いだ空に無数の星々が広がり満ちる生活へ

でも
オリオン座の真ん中の三つ並んだ星の
周囲にあんなに小さな星がたくさん密集しているなんて
初めて知った

「風光明媚」だけがとりえの、港町

昼時、展望台から見た海と空はあまりに美しく、息を呑む

港の人々は素朴で親切だ 玄関に鍵もかけず暮らす

白亜の灯台の岸壁には、荒波が打ち寄せては割れ砕け
その上を海鳥が何事もないかのように
すいすいと飛んでいく
風が吹きすさび ひゅぅひゅぅと泣くような音をたてる
師走の曇り空は、この島に相応しい寂しさを醸す

かつて様々な大作家がこの町を訪れたわけが
少しだけ解った

まぁ、悪くはない、か
と、一人ごちる

珍奇な年末 隠遁者の鴎盟生活

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