血汐

2008年5月22日
何も感じない顔をして、話す。

やればできるではないか。

生きた人間を、死んだ人間として扱ってきた。

日々ともに過ごす人間であるのに、1年も前から別れを告げ

ゆっくりと 現実の別れへの免疫を作り上げた。

それは、「他人」もしくは「過去」の間柄への準備。

最後の日
夜の帳の短い問答。

「…どうしてそんなことをした?」

憮然とした瞳。

「―言うまでもないこと」

対して、微笑み。

瞳と、瞳。

嗚呼。

何も感じないフリなんて。

死んでいると思っていたが、血の通う人間だった。

再度、問答。

「…どうしてそんなことを?」

傷ついた瞳。

そんなに理由を知りたいのならば。

「―この血汐のせい。」

対して、呟き。

その一言で意味を解した教養深い人は、不意にブレーキをかけて道端に寄せ、ハンドルから手を放し、この体を抱き寄せた。

1年かけた別れへの準備は、果たして無に帰した。



〜 やわはだの 熱き血汐を触れもみで さびしからずや 道を説く君 〜

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