Charisma

2008年11月11日 エッセイ
それは、抗いようもないぐらいとても自然な仕草だった。

ダウンライトで琥珀色に染まるバーで肩を並べて、
彼はウィスキー、私はカクテル。

話題は、最近お気に入りのビジュー・ピアスのことだった。
へぇ、見せて。
と言って彼は私の髪を長い指でかき上げ、
顔を耳元のピアスに近づけて、その大きな瞳でじっと見た。

触れられた髪、耳元にかかる呼吸。
それは、たった数秒のできごとだったのだけど、
自然な唐突さに思わず肩が粟立ち、ぞくっとした。

作為でなく、素でやってのけていることに驚く。
上手いな。巧みだ。
こんな人、滅多にいない。
天性の色男。

学生の頃から、新聞に名前が載ったり、テレビに映った人。
10代の頃から類稀な才能と、それを発揮し成果を残したスターは、
選ばれし者として当然のごとく、誰にも何にも動じない絶対的な“自信”を
天分として身につけていて、それは“オーラ”となって彼の身を包み、
また、オスとしての強烈な“フェロモン”として女を誘引する。

なんてセクシーなんだろう。あまりに魅惑的。
4つも年下なのに、思わずよろめきそうになった。
ある種のカリスマ。
一体、どれだけの女を堕としてきたのだろう。

だけど、雰囲気に呑まれるほどの小娘では最早ない私は、
とてもとても冷静に、その手をそっと振り払ったのだった。

少し惜しいような気もするけど、One of themになる気はないので。


ふっと、『源氏物語』のスーパーヒーロー・光源氏と、
年上の女・六条御息所の関係を思い出した。
圧倒的な魅力に対して抵抗できなくなった時が、負け時。
その点、私には余裕があるし、切羽詰ってもいないのだ。
だから、客観的に彼の心の内を観察し、分析もできる。
駆引きは、楽しい。

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